永遠を誓った愛の生贄
森で出会ったヴァンパイアのルナ。
この世のものとは思えないほどの美しさ、儚さに庇護欲を掻き立てられた。


ひと目見た瞬間に、私のものにしたいと思った。


「皇子、この間うちの娘が16になりまして…」

「隣国の姫がどうやら結婚相手を探してるようで…」


四六時中聞かされるお見合い話。
そんなことよりも早くルナに会いたい。

「失礼、ちょっと外の空気を吸いに」

どうでもいいパーティーを抜け出し、ルナのいる離れの部屋を目指す。
しかしそこにルナの姿はなかった。

「ルナ?」

もしや、逃げた…?
ここは3階。降りられるような高さではない。見張りのものにも一切城から出すなと言っている。

「ウィル?」

はっと気づくとほうきに乗ったルナが窓から現れた。

「ルナ…それ…」

「ああ、これ?前に貰ったのよ。本物の魔女からね」

魔法のほうきで外を散歩していたらしい。
そして近くの山で採れる珍しい薬草などを持ち帰ってきたと言う。
しかしそれを聞いて待てよ?とウィルは思った。

「それで逃げようと思えば、いつでも逃げられるのに…」

何故?と言われて再び空を飛ぼうとしたルナを捕まえる。

「逃さないぞ!」

ほうきの力の反動で部屋に逆戻りしてしまったルナとウィル。
顔が見るのが恥ずかしいのか、一向にこちらを見ずにルナは言った。

「初めてだったの。私に恋をした人間は」

ルナは長い間生きてきて恋人も友達もいなかった。
だからどうすればいいかわからないらしい。

「どうすれば今までのお礼ができるかしら?と思って薬草をとりに行って薬を作ることくらいしか思いつかなくて…」


「逃げようなんて考えもしなかった」


青白い月に照らされた漆黒の髪と真っ白い肌。そこに血のように真っ赤な目と唇が映えて、思わず。

「キスを、しても?」

許しを乞うように彼女を見つめて、目を閉じたのを合図に二人は唇を重ねた。


吸血以外で彼女の体に触れたのはこれがはじめてだった。
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