恋人ごっこ幸福論




「ごちそうさま、もう行くわ」

「え、はい」



そうやって考えているうちに橘先輩が片づけて行こうと立ち上がる。



「まだ早くない?もうちょい居ようよ」

「いや、俺は行く」

「でもさ、まだ多分皆集まってないぜ?だから行ってもしょうがな」

「行くったら行くんだよ、うっせえな」



提案を聞く気も無さげな橘先輩に、菅原先輩の表情が硬くなった。



「…橘。こんなこと言いたくないけどさ、さすがにその態度どうなの?」

「は?」

「緋那ちゃんに悪いと思わねえのかって言ってんだよ!俺隣で見てたんだかんな、お前おかずちょこっとだけ食ってずっと無言でぶすっとしてるだけは酷いだろ。ちゃんとするって言ったくせにそれってどうなんだよ?もう少しマシな態度できるだろ」



ピリッとした空気に、思わず言葉も発せずに2人を見つめる。なんか想像以上に悪い空気になっちゃった。

全然そこまでしてもらわなくてもいいのに、どうすべきか見守っていると。




「…今それどころじゃないから」

「あ、こら!待たんかい!」



橘先輩が溜息をついてからそのまま行ってしまう。少し緊張感の薄れた中、英美里ちゃんと紗英ちゃんは肩を下げて脱力していた。



「菅原先輩、」

「あ、緋那ちゃん…ごめんね~あまりにも馬鹿野郎だからさすがに厳しく言っておこうと思ったんだけどむしろ困ったよね」

「あはは…」



返す言葉が見つからない、困ったと言えば嘘ではないし。



< 102 / 304 >

この作品をシェア

pagetop