恋人ごっこ幸福論




「…そうだね。叔母さんからは好かれてないしお祖父ちゃんも私のことはそんなに興味ないんだ。でも今は叔母さんは結婚して離れて暮らしてるし、お祖父ちゃんもなんだかんだ私を養ってくれてるしそんなに酷いもんじゃないよ」


上手くいってはないけれど、今それ以外では凄く恵まれているし今の暮らしをさせてくれているお祖父ちゃんには本当に感謝してる。…実際、もっと辛いことは沢山あったし。

それがあるだけで今なんとかなってるし、だからこそなるべく自分が上手くいっていないことは考えないようにしたかった。



「そうかもしれねえ。だけど俺はあの時何言われても笑ってた緋那が、泣きたいはずなのに我慢してるように見えてさ。…その時俺が緋那を守れるようになりたい、好きだって思ったんだ」



そのとき、昔玲央ちゃんが「必ず強くなって緋那を守れるようになる」と突然手を握ってきたことを思い出す。

私は訳が分からずありがとうと言った記憶しかないけれど。それは玲央ちゃんにとっては決死の告白のようなものだったのだ、今になってそう気づいた。





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