恋人ごっこ幸福論
「だから緋那に再会したとき、守れるような男になるために鍛えたし強い男の研究もした。ほら、今はなんか強そうだろ?」
「強そうっていうか…ちょっと怖くはあるね」
このイカつい見た目は強い男のつもりだったのか、と納得する。
「あと本当は成長で髪も茶色くなってきたんだけど、緋那に気付いてもらえるように今は染めているんだよ」
「え、何それ」
「まあ緋那は気づかなかったから意味ねえんだけどな」
「それはごめん…でもあんまりにも雰囲気が違うから、」
と、その時すっと玲央ちゃんに両手を優しく握られる。
さっきまで冗談ぽく笑っていた彼の表情が急に真剣になって、真っ直ぐに私を見つめてくる。
「とにかく、あの時から俺はずっとお前のことだけを思い続けてきたんだ。今からでいい、俺の気持ちに応えることを考えてくれないか」
「玲央ちゃん…」
自分をそんなふうに思ってくれる人が現れることを想像していなかった、必死に努力しなければ愛されないと思っていたから。
こんなに本気で思ってもらえるだけでも幸せ、分かっているけど。
「……そう言ってくれるのは本当に嬉しいよ。でも」
「いい。今は返事しないでくれ。今緋那にその気がなくても俺はこれからその気にさせるからさ」
「…ちょ、玲央ちゃん」
玲央ちゃんが握ったままだった私の手にそっと唇を落としたとき、つい反射的に肩が上がってしまう。
これ以上は何となくまずいかも、慌てて手を離そうと必死に抵抗したとき。