恋人ごっこ幸福論
「…やっぱり本当は怒ってるんじゃないですか?心配かけたのに呑気に遊んでたなんて」
「怒ってないって。何も無く楽しかったならそれでいいよ」
「じゃあどうしたんですか…?」
じっと橘先輩を見つめると、先輩も私を見る。しばらくするとふいっと視線を逸らして呟いた。
「……やっぱり金髪バカが嫌いだなって思っただけ」
「え?」
先輩の言葉を聞いた時、丁度ホームに電車が入ってくる。
「じゃあ電車俺はこれだから」
「あ…私も、」
と言いかけたとき、タイミング悪く自分が降りる駅まで行かない便が来ていることに気づく。
先輩気づいてたんだ、言葉の意味を確認する間もないまま「また明日」と口パクで告げる彼が乗り込む乗客の波に消えていった。
なんで、改めて玲央ちゃんの事が嫌いだなんて言ったんだろう。その気持ちになにか意味があったりするのだろか。気になって仕方ないけど。
「…やっぱ楽しんでる場合じゃなかったよね~!もう何やってるんだろう私…」
それよりも、罪悪感でいっぱいでそれ以上先輩の言葉の意味を考えられそうにはなかった。