恋人ごっこ幸福論






「…つーか2人で随分楽しんでたみたいだな」

「え?」

「金髪バカのこと迷惑だって言う割には仲良くやってたじゃん」


駅のホームまで歩く最中、そう橘先輩に聞かれて思わずたじろぐ。

確かに乗り気じゃなかった割には楽しんでしまった、そのことに少し罪悪感はあって。


「元々子供の頃に仲良くしてたのもあって、確かにちょっと楽しんでしまったとこはありますね…」


正直に橘先輩に話すと、居たたまれなさを感じた。好きだって言いながら好きな人以外と楽しんでしまったなんて情けないけれど、嘘は付けないと思ったから。



「へー、てっきりアイツのこと嫌ってんのかと思ってたけど。迷惑そうにしてるし」

「あまりにも強引だから迷惑はしてたけど…嫌ってた訳ではないです。もうちょっと普通に接してくれたら助かるんですけどね」

「ふーん…そうなんだ」

「橘先輩…?」



やっぱり少し機嫌が悪そうに見える。彼の横顔を見上げてみるけれど、ポーカーフェイスの彼が何を考えているかは読み取れない。





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