恋人ごっこ幸福論
「橘先輩は…私がただ助けられた恩で懐いてるだけだと思ってるんですか」
「…それ以外に理由あんの?」
「私は貴方のことが好きだから毎日会いに来てるんですよ」
心底不思議そうにする彼に自分の思いをストレートに口にすると、彼は唖然とした表情をして。そしてすぐに視線をずらした。
「助けた、っていっても大したことしてないし結構失礼なことも言ったと思うけど」
「ちょっと失礼だなって思いましたけど、でも私に真剣にああ言ってくれたのは先輩だけだったから」
「別に、そんな大層なもんじゃない」
「そうであってもなくても、私には先輩が優しい人にしか見えないし、会うたびに好きって気持ち以外感じられないんです」
伝えられる限り、とにかく今自分の思う気持ちを伝えると今更ながら、なんだか恥ずかしくて心臓がドキドキと音を立て始めた。
告白ってやっぱりドキドキするんだな。でもあの日、自分の気持ちは隠さずに正直に伝えるって決めたからこんなことで緊張なんてしていられない。
もう何処かに隠れてしまいたいくらい恥ずかしくなっていたけれど、真っ直ぐ目を逸らすことなく橘先輩を見つめ返した。
だが、彼はどうしたらよいのかわからないのか。少し罰が悪そうに視線を逸らしたまま口を閉ざしていた。