恋人ごっこ幸福論
「…っ、休憩終わり。練習再開するわ」
「あ…」
「勝手に見たきゃ見りゃいいから」
そして突然、私が返事を返す前に立ち上がって、再びコートの中心へと戻っていった。
まあ、返事を貰えるとは思っていなかったし流されたって別にへこたれはしないけど。このくらいは寧ろ想定内だし彼に拒否されたわけでも、避ける訳でもないのなら。
「橘先輩!」
コートに向かって大きな声で呼びかけるとムッとされる。
「邪魔していいとは言ってねえけど」
「ごめんなさい、だけど1つだけ聞いていいですか」
「何」
「明日からも朝練見に来てもいいですか?」
「…明日も来る気?」
「だ、駄目ですか…?」
不安になって恐る恐る聞くと、
「俺が朝練しているの火曜と木曜だけ。明日来てもいねえよ」
とそっぽ向いたまま答えてくれた。
「じゃ、じゃあ!木曜日にまた来ます」
「好きにしたら」
特に反論するわけでもない、別に気を遣われているわけでもないその返答に安心した。