恋人ごっこ幸福論
episode.3
「あ、緋那ちゃん帰ってきた」
「ひぃちゃん!待ってたわよ」
「ただいま、2人共」
昼休み終了間近、教室へと戻ってくるとすぐさま紗英ちゃんと英美里ちゃんが駆け寄ってくる。
「で、ランチタイムはどうだった?」
目的は勿論、橘先輩との昼食の様子を聞き取りすること。
恋バナが聞きたいというよりむしろ心配し過ぎて様子が気になるといった2人は、かなり食い気味に近寄ってくる。
「お話はゆっくりできたよ。…ずっと私はドキドキして空回りしてたけど」
「で、何話したの?これからどうするとか、そんな感じのこと?」
「そうだね。とりあえずお互いのことをもっと知ることから始めようかってことになって。橘先輩に私のことをもっと興味持ってほしい、って伝えたかな」
「なによそれ、恋人以前の段階じゃない…」
紗英ちゃんの質問に答えると、深い溜息をついて英美里ちゃんが頭を抱える。
確かに段階としては大分低いけれど、順序が逆の恋愛だから仕方ない。それは最初から分かりきってるし、そんなに気にしてない。
「これから好きになってもらうから大丈夫だよ。…今のところなんか振り回されてばかりだけど、橘先輩も一応恋人らしいことをしてみようとは思ってくれているし、時間は掛かるかもしれないけど大丈夫。これまで通り頑張るよ」
思い付きだけの無計画なランチタイムだったし、ドキドキさせられてばかりだったけれど。
でもこのまま続けていたらきっと私も多少慣れてくるはず…だし大丈夫なはずだ。