恋人ごっこ幸福論
episode.1
それから数か月後、私は高校生になった。
「橘先輩、かっこいい…」
「…相変わらずだね。緋那ちゃん」
「本当、良く飽きないわね」
「そりゃそうだよ!私の大大大好きな人だもん」
入学先は、県立 一條高校。あの日、私を助けてくれた彼が来ていたジャージの高校。
そう、私は助けてくれた彼―――橘彼方を追って一條高校へ入学してきたのだった。
あの日の出来事がきっかけで、私は助けてくれた男子高校生に恋をした。
名前も知らない、一高に通う生徒ということだけを手掛かりにまた彼に会うため、必死に受験勉強をした。
この辺りでは偏差値が高いことで有名な一高に入るためには、そんなに成績が悪くなかった私でも、真面目に勉強しなければ落ちる可能性もあったからだ。
その後の日々は…やっぱり楽しいものじゃなかったけれど、受験に成功するためと思えば辛くなかった。
そして無事受験勉強に成功して入学後、あの日の彼を見つけた。
見つけるのに時間がかかると思っていたが、彼の端正な顔立ちは校内でも有名らしく、簡単に名前、学年、部活まで特定することができた。
文系2年、バスケ部所属の一高随一の美青年。
あの日私を助けてくれた救世主は、女子生徒からの人気が高く放課後の部活には体育館に多くの女子が押し寄せていて。私もそこに混じって毎日密かに彼に会いに来ていた。