【短】泣きたいほどに叫びたいほどに、私はただきみが好きだから
「がーくとっ」
「おぅ!叶津!どした?」

卒業証書の入った筒を持って、ひょこっと教室に現れた岳人の名前を呼べば、太陽みたいなキラキラな笑顔をくれるくせに、その口唇からは私の気持ちを沈ませる言葉しか出て来ない。

「今日さ、なお先輩が卒業祝いにデートしてくれるんだよね…へへっ。なんかくれたりして…」
「そーなんだ。じゃあ…楽しみだね!」

前髪をくしゃり、とする仕草。
その仕草で、『あぁ…今、なお先輩のこと考えてるんだな』なんて分かってしまうのはきっと…岳人を好きな私だけ。

なお先輩は、私の親友のお姉さんで、私達より2つ上の学年の先輩だ。


なお先輩は、私にとってもお姉さんみたいな存在で、優しくて温かくて可愛くて…岳人が好きになるのも仕方がないことだけど…ことなんだけど。

こんなにも辛い気持ちを背負わなければならないのなら、あの時先輩を岳人に引き合わせるんじゃなかったとさえ思う。

今となっては遅いけれど。

事の発端は1枚の写真。
親友となお先輩と私の三人で、海に行った時の写真。
風が強くて、海のさざなみが大きく聞こえて、私達のテンションは高かった。
その時、皆でそれぞれのキメ顔で撮った写真を、岳人に見られてから…岳人は一目でなお先輩に恋に落ちてしまった。
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