【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 仮にも王女。ちまたでは『修道院でつつましやかに暮らしている聖女』と謳われているルルを『毛玉』扱いとは、容赦なさすぎではなかろうか。

「あなたね。毛布に絡まっていたのは本当だけど。毛玉は言い過ぎよ」
「他のなにに見えるというのですか? あんな小汚い毛玉のなかに、未来の聖王であるルルーティカ王女殿下が絡まっているとは誰も思わないでしょう。つまりは、誰もルルーティカ様がこの屋敷にいると知らないということです」

 ノアは、立ち上がってカーテンを閉めた。日が沈んで青みの増した空は閉ざされ、あちこちに置かれたランプが灯る。

「ルルーティカ様には、聖王として無事に戴冠されるまで、この屋敷で暮らしていただきます」
「悪いけど、貴方がどれだけ身を削っても、私は聖王にはならないわ」

 ルルは、王位継承権なんて重たいもの、捨てられるものなら捨てたいのだ。政争や義務に押し潰されそうになりながら生きるより、毛布に包まって眠っていたい。

 多くを望まなければ、十分に幸せに生きられると、ルルは知っているのだから。

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