【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
「お前が、王女ルルーティカ・イル・フィロソフィーか?」

 騎士は抑揚のない声で問いかけてきた。
 ルルは、毛布をぎゅっとかき合わせて答える。

「そうだけど。何かご用?」
「…………」

 険しい顔で床に着地した騎士は、腰に差していた剣を抜いた。陽光にきらめく白刃に、ルルの体は硬直する。

 この騎士、ひょっっとして王女である自分を殺しにきたのでは?

 だが、ルルを殺して得られるものなどない。ルルは王族だが、魔力も王女としての使い勝手もなくて修道院に捨てられた身だからだ。

「あなたが誰に命令されてここに来たのかは知らないけれど、私に殺すだけの価値はないわ。くだらないことで手を汚して国賊になるなんて愚かよ。お帰りなさい」

 壊れた扉を指さす。ちょっと乱暴な言い方になってしまったのは、せっかくの二度寝の機会を邪魔されたからだ。

 頑として動かないつもりでいると、騎士は苦しげに口を引き結んで――ぽいっと剣を投げ捨てた。ルルはぎょっとする。

「えっ?」
「それでこそ、我が主……」

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