オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
京大医科部附属病院。
鴨川を挟んで点在する病院建物。
近くには京都御苑、徳川家康公が生誕した岡崎城を中心とした歴史公園・岡崎公園もある。
岡崎公園は『日本の桜の名所百選』に選ばれた桜の名所。

夜桜の美しさは東海髄一とも言われていた。

同じ京でありながら、東京の街は眠りがないし、空気も淀んている。
京都のカラダに纏わりつく湿気のある夏の暑ささえ我慢すれば、緑豊かで空気も美味しい。何よりも歴史ある。
時間があれば、鴨川を眺め、抹茶アイスを食べながらボーッと過ごすのが俺の日常だった。

染中さんには悪いけど…
この生活に慣れてしまった俺は多分東京には戻らないと思う。

「栗原先生」

「あ…石沼さん」

気管支炎で入院した石沼さんの孫が俺の名前を呼ぶ。

孫の香さんもまた京大の経済学部二回生。

「おばあちゃんが今日退院するので、母と二人で荷物を取りに来ました」

「そう…今日退院ですが…それは良かったです」

俺は笑顔で彼女の礼に応えた。
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