【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 先のほうがアイロンの長い棒部分に巻き付けられ、数秒だけ挟まれて離される。
 離れた髪は、くるんっとカールしていた。
 美波は感動してしまう。
 お姉さんは手際よく、うしろの髪をすべて巻いてしまって、最後に顔の横に少し出していた髪も同じように巻いてくれた。
 そうしてから、前から見て、バランスを見てだろう。
 少しほぐしたり、ふわっとさせるように摘まみだしたりされる。
 「あんまり写らないけどね」と前髪もセットされた。
 ふわっとなるようにブラシで持ち上げられて、同じく、先だけを軽くアイロンで巻かれる。
「よし。じゃ、最後に固めまーす。目を閉じてね」
 仕上げにシューッとヘアスプレーをかけられた。これで完成のようだ。
「はい、できました。どうかな?」
 ぽん、と肩を叩かれて、美波は目をそろそろっと開けて、鏡を見て、びっくりした。
 自分ではないようだった。
 いつもただストレートに下ろしたり、アレンジしたりするときもアップにしたり、ツインテールにしたりといった結ぶだけの格好とは全然違っている。
 下ろした髪の先が、ふんわりしていてとてもやわらかそう。
 前髪もふっくら持ち上げられていて、横髪もくるんと控えめにカールしていて。
 本当のモデルさんのようだった。
 と、思って美波は、はっとする。
 自分は本当のモデルではないけれど、今日はその役をしなければなのだ。
 でも、この格好なら。
 綺麗にセットしてもらったこの格好なら。
 できる、かもしれない。
 鏡に映る、まったく違うように見える自分の姿を見つつ、美波は思っていた。
 手を胸の前で、きゅっと握る。
 頑張ろう、と思う。
 引き受けたからには、ちゃんとやりとげたい。
 北斗のためにもであるし、雑誌のためにでもあるし、それから、自分のためにも。
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