【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。

　言われて、美波の胸が詰まったようになる。
　でももうだいぶ落ち着いたのだ。自分もテーブルにマグカップを戻した。
　膝の上に置いていた、もうくしゃくしゃになってしまったハンカチを、ぎゅっと握る。
　言わないわけにはいかない。
　こんなおかしな様子で帰ってきて、泣いてしまって、おまけにココアまで淹れて気づかってもらって。
　北斗もトラブルにまるで関わりのない存在ではないし、こんなことになってしまったなら、黙ってもいられない。それでは多分、あずみを怒らせてしまったのと同じことになる。
　それに家族、なのだから。
　きっと、話して良いのだ。
　美波はそう思って、そろそろと口を開いた。
「友達と……、あずみと……、その、……喧嘩、みたいになって……」
　美波の言ったことに、北斗はちょっと目を丸くした。
「そう、なのか。あの子だよな、撮影見学にも、前、来てくれた……」
「うん、そう」
　北斗も覚えてくれていたらしい。美波は単純に肯定した。
「それで……、……」
　続けようとしたけれど、そのあとが出てこなかった。
　【スターライト ティーンズ】のこと。
　北斗との撮影のこと。
　言ってしまったら北斗を不快にさせてしまうのではないか、という不安がまた湧いてきてしまって。
　情けない、さっき言うと決めたのに。
　思って、もう一度ハンカチを握りしめようとしたのだけど、美波のその手の上。
　あたたかいものが重ねられた。
　美波が驚いてそちらを見ると、北斗が微笑んでいる。
　美波の強く握ってしまった手をほどかせるように、優しく上から手でおおってくれて。
「大丈夫だ。話してくれ」
　そのあたたかな手と、勇気づけるような笑み。
　両方に背中を押されて、美波はごくっとひとつ、つばを飲み込んで、口を開いた。
「……【スターライト ティーンズ】に載ったのが私だって……、知られちゃったの……」
「……えっ」
　美波の説明はまだ最初のほうだったのだけど、それでも北斗には驚きだったようだ。目が丸くなったし、声も一言だけだった。
　でもそのあと、北斗は、きゅっと口を結んだ。
「……悪い」
　一瞬、どうして謝られたのかわからず、今度、「え？」と言うのは美波だった。
　北斗は美波の手の上の自分の手に、少しだけ力を入れて、きゅっと握ってくれて、言った。
「俺が頼んだから……だよな。迷惑かけない、なんて言ったのに……」