【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 そんなの、怒っても仕方がないことかもしれない。
 なのに、美波は、まったく怒る気になんてならなかった。
 ただ恥ずかしいとか、ドキドキするとか、もしくは体が熱くなるとか、そんな気持ちばかり浮かんできて。
 その反応は示していた。
 多分……、嫌では、なかった、のだ。
 そして少し落ち着いた今では考えられる。
 あずみに、北斗と付き合っていると誤解されたときのこと。
 嫌だと思わなかったのだ。あのときも。
 両方を合わせて考えれば、多分、自分は……。
 『これでそろそろ自覚してくれるか?』
 北斗に言われたことが、やっと頭でちゃんと理解できた。
 今度は理解できたがゆえに、困ってしまったけれど。
 自覚した、と思う。
 嫌でも自覚させられた。
 付き合っているのではないかという誤解から、そして北斗からのキスからで。
 遅すぎたのだ、と思う。
 情けないことだ、とも思った。
 二人からつつかれて、やっと気付いたようなものではないか。
 でも、自覚してしまったら、どうしたらいいのか。
 そう思うと、またばふっと頭の中が煮え立ってしまうのだった。
 もうわかったのだから。
 自分は北斗が好きなのだと。
 家族でも幼なじみでも先輩でもなく、北斗が好きになってしまったのだと。
 それで、多分、キスをしてくれたということは、北斗からも同じような気持ちを……。
 今度は煮え立つでは済まなくて、美波は頭まで布団に潜ってしまった。
 恥ずかしくてならない。
 でも同じくらい、嬉しい、と思う。
 自覚してしまえば、北斗の好きなところなんていくらでも浮かんできてしまうのだから。
 学校やモデルとしての、しっかりしていて、優しくて、カッコいいところ。
 自分に対する、ちょっとぶっきらぼうで、意地悪なところ。
 だけど自分のピンチを救ってくれたり、頼りになるところ。
 どれも特別に好きだったのだ。
 本当に、気付くのが遅すぎた。
 だから、次に進まなくてはいけないのだ。
 自覚して、多分北斗からもそうなんだろうな、と思えたら、次なんてひとつしかない。
 ……北斗に、好きだと言う。
 はっきり、自分の口で、直接言う。
 やるべきことで、本当はそうしたいとは思うけれど。
 でもどうしてもためらってしまって。
 美波はその夜、結局まったく眠れなかった。
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