【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
「そうね……、じゃあ、なにかあったら呼んでちょうだいね」
 保健の先生は椅子から立ち上がって、北斗と交代した。
 ベッドサイドの椅子に、北斗が代わりに座る。
 先生は出て行った。多分、先生も多少なりとも、なにが起こったのかは知っているのだろうけれど、とりあえず、今は安心できた。
「朝位さんが俺を呼びに来てくれたんだ。美波が倒れたって」
 朝位さん、つまりあずみのこと。
 北斗に知らせに行ってくれたのだ。
「それに、朝位さんがとっさに腕を掴んでくれたから、倒れたとき頭を打たずに済んだんだって。あとでもう一回、お礼を言わないとな」
「そう、……だったんだ。うん、そうだね」
 美波はまだぼうっとしつつも、そう言った。あずみには助けてもらってばかりだ。
 そのあと、少し沈黙になった。
 美波もじわじわ思い出しつつあった。
 倒れてしまうほどショックだったこと。
 あの写真。
 書いてあったつぶやき。
 あんな写真、あっただろうか。
 どこで撮られてしまったのだろうか。
 一瞬、見ただけではわからなくて。
 美波は自分からはなにも言えなかった。
 そのとき、ふいに北斗が口を開いた。
「……悪い、俺の、せいで……」
 謝られたことに、美波は驚いてしまう。それに理由もわからない。
「え、……どうして……」
 そのまま聞くと、北斗は座った膝の上で、ぎゅっと手を握った。
 思い切った、という様子で言う。
「あの写真……、少し前、美波の家の前でのことだ……」
 言われて、美波はやっと理解した。
 少し前。
 美波があずみと雑誌の件でトラブルになって、傷ついて帰ってきた日。
 確かにあんなふうに、北斗が抱きしめてくれた。
 そのとき撮られてしまった、というのだろうか?
「俺がうかつだった……、外であんなことするのは危険だって、今までならわかってたのに」
 北斗はうつむいて、後悔したという表情で続ける。
 美波はそれを聞くしかなった。
「トリッターであんな写真を載せたのが、誰かはまだ特定できないけど、なんとなく想像はできる」
< 70 / 85 >

この作品をシェア

pagetop