【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 高校生……。
 北斗は今、中三だから、約半年後ということだ。
 美波の胸の中が、ひゅっと冷えた。
 まさか、もう会えなくなってしまうのだろうか?
「んな顔するなよ。ずっといなくなる、なんて言ってねぇだろ」
 それは顔に出てしまっていたようで、北斗は笑みを浮かべた。
 手を伸ばして、どうするかと思えば美波の頬をつまんだ。ぷにっと軽くつままれる。
 痛くはないが、刺激にはなって、美波の顔はちょっとゆがんでしまった。
「もう! からかわないで!」
 なんとかその指から逃れて言うと、北斗はくくっと笑う。
「おもしろい顔だったのに」
 とりあえずそれでおしまいにしてくれて、続きを話してくれた。
「行き先はアメリカ……、父さんと母さんの仕事のつてと、事務所の紹介を使う予定。一回目は三ヵ月の予定だ」
 三ヵ月。
 ずっと行ったきりになってしまうよりはいいけど、と美波は思ってしまう。
 でも長い時間に変わりはない。
 会えなくなってしまうなんて、と寂しくなって、それは北斗にやはり「んな顔すんなって言ったろ」と言われてしまった。今度はつままれなかったけれど。
 北斗は遠くを見ているような目になる。
「モデルの仕事。本格的に学びたいんだ。一流になるために」
 その言葉で、美波はすべてを理解した。
 留学はモデルの修業を積むため。
 日本でもできないことはないだろう。
 でも海外で勉強できることは、きっと多い。
 そう、世界に通じる『一流』になるのには、やはり留学で学ぶのが一番なのだろう。
「……すごいね」
 寂しい気持ちのほかにも、感嘆や尊敬。いろんな気持ちが湧いてきて、出てきた言葉はシンプルになってしまった。
 それだけだったけれど、美波の気持ちは伝わってくれたようだ。
 北斗はこちらに視線を戻して、「さんきゅ」と言ってくれたから。
「夢だったんだ。そうだな、中一くらいの頃から。最初はスカウトされてなんとなくやってたことだったけど、思い知るようになった。俺は本気でモデルの仕事に取り組みたいんだって。それで、やるからにはトップに立ちたいんだって」
 そのとき、もう一台、飛行機が飛んできた。
 まるで北斗の夢を乗せて飛び立ったよう、と美波は感じてしまった。
「……北斗なら、できるよ」
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