元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 マロウが穏やかに止め、改めてシュクルを見つめる。

 ゆらゆら揺れていた尻尾がぴたりと止まった。

「君の治める地は最も人間が多い。万が一なにかあれば、ほかへの影響は計り知れないんだよ」

「わかっている」

「もし君がその勇者に打ち倒されるようなことがあったらどうするんだい」

 大陸を治める魔王にとってあってはならないことだった。

 絶対的な強さを持った存在がいるから、獣の性質が強い亜人たちは本能のままに動かず、王のもとに従う。共存の道を生きる南の大陸以外で、人間と亜人とがいがみ合いながらも生きているのは魔王の存在によるものが大きい。

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