元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 人間はすべての亜人を束ねる強大な王がいると知れば、うかつに手を出してこない。そしてまた、亜人も王の意に添わぬことはしない。

 例外はもちろんあるが、こうして均衡を取れているから今までなにも起きずにいられた。

 それが崩れることにでもなれば。

 そんな心配をにおわせたマロウに向かって、シュクルは滅多に見せない微笑を浮かべる。

「問題ない。私は白蜥の魔王だ」

 そしてシュクルは一言一言、刻むように言う。

「人間を滅ぼすことなど、そう難しくはない」

 お喋りなキッカも、口の悪いギィも、今回のシュクルに否定的なグウェンも、皆、口を開かない。

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