元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……もうちょっとそっちに行ってほしいの」

「落ちる」

「そんなに狭くないでしょう」

「狭い」

「誰のせいなのかよく考えてみてね」

「……これ以上、小さくはなれない」

 そう言いながら、シュクルは一生懸命身体を縮こまらせる。

「自分の部屋で寝た方が伸び伸び眠れるんじゃないかしら?」

「この方がいい」

 毛布の下でシュクルの手がそろりと動く。

 突然手を握られたティアリーゼはぎょっとしてしまった。

「眠るときは寂しい。ひとりだから」

「……じゃあ、仕方がないわね」

 そう言われてしまうと、本当に仕方がなかった。

< 184 / 484 >

この作品をシェア

pagetop