元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
***
旅は不気味なほど順調だった。
ティアリーゼたち一行を迎える人々は温かく、宿や食事を快く提供してくれた。道中で悪漢に襲われることもなく、想定よりもずっと早く『魔王』の住まう城に辿り着いたわけだが。
(なにが起きているの)
ついに到着した城の大広間にて、ティアリーゼは絶句していた。
ほとんど会話のなかった仲間たちが、魔王とされる男の前に膝をついている。
しかも、だ。
「供物を届けに来ました。どうか、我が国には大陸一の繁栄を」
信じられない言葉は、仲間のひとりから発せられた。痛いほどの静寂の中、やけに響いてティアリーゼの思考を奪う。