元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(供物? ……誰が?)

 ここまでの記憶が走馬灯のようによみがえる。

 魔王の居城はタルツの城とは違い荘厳で、雪をまぶしたように白く、光を受けて眩しかった。人々を苦しめておきながらこんなにも美しい場所に生きているのかと、激しい感情に襲われたものだった。

 ああ、と嘆息する。思えば、仲間たちは戦うこともしなかった。

 あんなにも毎日訓練をしたというのに、仲間を含め、自身もここまでほとんど剣を振るっていない。必要以上に傷付けることはないと戦いを避けてきたのもあるが、今思うとそんな甘い考えが通る時点でなにかがおかしかったのだろう。

「どういうことなの」

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