元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 タルツでよく嗜んでいた紅茶とは味が違っていた。こちらで飲む紅茶はもっと香りが強く、味にも癖がある。今日ティアリーゼが飲んでいるのは、舌先にぴりっとした刺激を感じる、やはり飲み慣れない変わったものだった。

 だが、目の前のシュクルは特に気にした様子なく飲んでいる。

 それを盗み見ながら、ふう、と息を吐いた。

 先日からティアリーゼはシュクルと食事を共にするようになった。

 ティアリーゼをおいしそうに見える、といった発言から若干不安を抱いていたものの、用意された食事はごくごく普通のもの。普段からティアリーゼに供されていたものとそう変わらない。

< 245 / 484 >

この作品をシェア

pagetop