元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ははは、と男は笑い続ける。おかしくてたまらないと嘲るように。

 それに憤っている余裕はなかった。

 たった今、男が告げた言葉のせいで。

「タルツでなにが起きていると言うの……?」

「さあ、なんだろうな?」

(……亜人たちが国を襲った? ううん、そんなことはありえない。シュクルが許さないだろうし、そんな話があれば私の耳に入ってこないはずがないもの。それに、そこまでの一大事だったらこの人も笑っていられないはずだわ)

 そこまで考えて、はたと気付く。

(この間、お兄様は私にシュクルを殺せと言ったわ。あれは……魔王の討伐を諦めていないということではないの?)

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