元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 いや、と首を横に振る。

 エドワードはティアリーゼにそう命じたが、ほかならぬティアリーゼ自身がそれを拒んだ。

 シュクルのことは殺せない。人間として、亜人たちの中で生き、そこから共存の道を探してみせると伝えている。

 それをエドワードは受け入れた。ティアリーゼの髪を撫で、再びシュクルのもとへ戻るのを認めてくれたはずだった。

 黙り込んだティアリーゼを見て、男は更に声高く笑う。

 なにも知らない哀れな元勇者を嘲って。

(この人が私を騙そうとしている可能性だってあるじゃない。自分を助けるどころか亜人の味方をする人間に、なんらかの嫌がらせをしたいと思ってもおかしくないわ)

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