元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。

「刹那しか共に生きられなくても構わない。私にとってはその一瞬が永遠だ」

 キッカの真横をシュクルが通り抜ける。向かうは開け放たれたバルコニーの向こう側。

「クゥクゥ、頼みがある」

「……なんだよ」

「私が戻らなかった場合、レセントの地は任せた」

「……ったく」

 キッカは再び退きそうになった自分を奮い立たせ、友人に向かって踏み出した。

 触れられるようになってからそうしてきたように、軽く小突く。

「俺、どっか縛られんの嫌いなんだよ。ほんとは魔王業だって向いてねぇ。面倒見てやらなきゃならねぇ場所が増えんのはたまったもんじゃねぇんだ」

「クゥクゥ」

「だから、帰ってこいよ」
< 346 / 484 >

この作品をシェア

pagetop