元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ぱちぱちと爆ぜる炎の中から、生き残った兵たちがそんな姿を仰ぎ見る。

 その視線に気付き、ティアリーゼは彼らに向かって言い放った。

「魔王を滅ぼしたいのなら、正々堂々と――勇者として城に来ればいい。そのときは、かつて勇者と呼ばれた私も相手をするわ」

 同じ人間だからといって手加減はしない、と言外に込める。

 そうして最後に眼下の兄を見やった。

(道は違えど、人を想う気持ちは同じなのだと思う。だから――)

 この国を頼むと言おうとしたティアリーゼの目の前で、シュクルがふっと炎を吐いた。

(……え)

 炎が消えたとき、そこに人の姿はなかった。

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