元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ティアリーゼは中央の地レセントにある小国タルツの姫として生を受けた。

 同時に――『魔王』を倒す『勇者』として、その存在を知られている。

 ――魔王。

 それは人ならざる者たちの王であり、大陸と、そこに住まうすべての生き物を治める者のことである。

 五つの大陸にはそれぞれの魔王がひとりずつおり、当然レセントにも存在している。人は人ならざる者を疎み恐れながら、その存在に支配されて生きているのだ。

 だからこそ、ティアリーゼがいる。

「あなたの役目はなにか、覚えておりますね」

「もちろん」

 答えて、ティアリーゼは歌うように囁く。

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