元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「いい人なのはわかるんだけど、あなたのそういう突拍子もない考え方にはまだついていけないわ」

「まだ」

「……今後もついていけないと思うわ」

 ふ、とトトの笑う声が聞こえてティアリーゼは目を丸くする。

 張り詰めていた空気がぐっと和らぎ、知らず緊張していた身体から力が抜けた。

 だからか、余計な質問をしてしまう。

「あなたにも恋人がいるでしょう? それこそ王様ならふさわしい相手が用意されているものだと思うけど」

 ティアリーゼの兄はそうだった。

 いつか国を治める際、王を支えるにふさわしい妻をと幾人もの候補者が用意されていた。

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