羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】


「人の顔を覚えるのは得意って言ったでしょ?」
 ふふ、と楽しそうに副社長は笑う。

 今でも覚えているなんてすごい。でも、病院に行った理由は今でもあまり大きな声で言えないものだけど……。そんなことを思っていると、副社長はそれ以上それについては触れてこなくてほっとした。


「で、健人と付き合うことになったんだ?」
「なんで知って……」
「うん、もちろん知ってる。それに……」


 そして、私の方を見ると、
「ほんと、ごめんね」
とまっすぐ頭を下げて謝った。


「え? えぇ⁉ そ、そんな謝っていただくようなことじゃ……! ってなんで謝るんですか⁉」

 私が慌てて胸の前で手を横に振る。そして思わず周りの社員を確認した。
 私、この場面を誰かに見られたら、『副社長に頭を下げさせた女』になりかねませんけど⁉

 幸いにも周りには誰もいなくてほっとする。なのに、当の副社長は顔を上げると、それを見て楽しげに笑った。

(なに? なんだったの……?)

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