羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 まだ明るくなる前の早朝、起きたら目の前に愛しい顔があった。

「……ん、先輩?」

 寝ぼけて、呟くと、ふふ、と健人さんは嬉しそうに笑う。

「久しぶりに『先輩』って呼ばれたかも」

 そう言って抱きしめられる。子どもができてから何度も訓練され、私は『先輩』を『健人さん』と名前で呼べるようになったのだ。呼び慣れてくると、次は先輩、とは呼ばなくなっていた。

 そんなことを思って目線を落とすと、健人さんの裸の胸板が目の前に来て、やけに恥ずかしくなってしまい目線をそらした。

「みゆ? もしかしてまだ恥ずかしがってるの? 昨日の夜もさ何度も顔隠すし。それ見たらまた興奮しちゃったけど」
「わぁああああああ! もう、やめて! やめてぇ!」

 泣きそうな私の頬にキスを落として、次は唇に軽く触れるだけのキスを繰り返す。
 そしてまだ、ぎゅう、と抱きしめられた。


「……幸せだな」
 健人さんが心の底からつぶやいたような言葉がやけに胸に染みた。

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