羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
父は、一息つくと、
「羽柴先生、よければうちに入っていって」
と軽く言った。えぇ……それはやだ、と思っていると、先輩は笑って手を横に振った。
「いえ、もう失礼します。タクシーも待たしているので」
「そう、残念だな。またきてね」
と勝手なことを言う。
でも、私は心底ほっとしていた。
いろいろ今、頭の中が整理できていない。
羽柴先輩がタクシーに乗り込むとき、
「あ、先輩、タクシー代」
とお金を渡そうとすると、羽柴先輩は私の手を引っ張って、自分の方に寄せる。
そして、耳元に唇を近づけると、
「みゆ、今日、かわいかった」
と言ったのだった。
先ほどの出来事が頭を回る。キスされて、私は先輩のスーツを掴んでて。
ドクン、と胸が鳴って、顔も熱くなって、私は思わず腰をずざっと引く。
「なっ……な……!!」
(なんだよ――――! この心臓に悪い人は!)
言葉にならない言葉が口から出る。先輩はそんな私を見ると、じゃ、またね、と言ってタクシーを出発させた。