羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
「どうした? みゆ」
父が言う。ありがたいことに、父には聞こえていなかったらしい。
いえ、なんでもない、と返して、家に入ろうとしたとき、
「……ってこれ」
持っていたカバンの中に、見慣れない、いや、一度だけ目にしたものが入っていた。
そう、それは、先ほど見た先輩のマンションのカードキーだったのだ。
「またこんなの置いていきやがったーーーー!」
口が悪くなったのは私だけのせいではない。
って言うか、先輩、どんだけ手先が器用なんだ!
泣きそうな顔でタクシーが行った先を見つめていると、父が隣に来ていた。
「みゆはその……どう思ってるの? 羽柴先生のこと」
「どうもこうも、別にどうとも思ってない! マジシャンに転職すればとは思ってるけど!」
父は困った様子で頭を掻いて、息を吐く。
「……でも彼はもう十分、大人だと思うけどな」
父がつぶやいた言葉は、私の耳には届いていなかった。