羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
父にまでまだ心配かけて私はなにをやっているのだろう……。
父もいつまでも彼氏も作らない、結婚できない私を、怒ることも焦らせることもなく、ただ見守ってくれている。
私だって大人になりたいし、父のように大事に思える人が欲しいけど……。
私はまだ私の小さな世界を守るのに精いっぱいだ。
結局、私は今でも、あの頃と何も変わってないのかもしれない。
そんなことを思ってぼんやりと外の景色を眺めていた。
それから何分くらいたったかわからなかったけど、気付いたらもう映画の始まる時間が近づいていた。
そろそろ出ようかな、と思ったところで、必死にこのカフェの方向に走ってくる男性が目に入る。
見たことあるような……? と思って、目を凝らすと、
「先輩⁉」
私はガタガタッ、と席を立ち上がった。
すると、先輩はそんな私に気づき、手を振った。
「みゆのお父さんから連絡もらって」
「ななななななんで……⁉」
「とにかく行こう」
先輩は笑うと、私をカフェから連れ出す。私は全く意味が分からないまま、映画館まで連れていかれ、父と見る予定だった映画を、先輩と見ることになったのだ。