弱みにつけこむとか最低ですね
これパワハラだよ、パワハラ…。
若しくはあれだ。精神ボロボロにさせる何とかハラスメントとかいうやつ。
自分の行いを棚に上げて批判するしか心を保つ方法がない。
けれど、ビビりすぎているせいで、ソーダー水をごくりごくりと飲み干すキャプテンの姿を黙って見ているだけしかできない私に掛けられた言葉は意外にも…、
『望月、大丈夫?』
「………え?」
酷く優しく響いた声に、ぽろりと涙が零れ落ちた。
嘘だ。何これ?
泣くつもりなんかないのに、涙が溢れてくる。
止められないそれがどうしょうもなくて、目元をグイっと拭って鼻をすすれば、『男かよ…』と呆れたような声がした。
「一応、女子です。見えないけど…」
『見えねーの?』
あはは…と呑気に笑われて、なんか分かんないけど、ムカついた。
「見えないでしょう?いつだって誰にも女扱いしてもらえたことなんてないですから…」
『何だよ。なんでキレてんの?』
「別にキレてなんか…」
―――八つ当たり。
多分、これだ。
止まらない涙をジャージの袖で拭いながら、嗚咽が漏れた。
もうわけ分かんないけど、悔しくてしょうがない。
『もーちーづーき?泣くなよー』
茶化すように、でも、どこか困ったように笑う香坂キャプテンに戸惑いが隠せない。
なんで…なんで今日に限って怒らないんですか?
ズバズバといつものように遠慮のかけらもなく、ぶっ刺してくれた方がこっちもペースが戻るってものなのに…。
涙が止まらないのはキャプテンのせいだ!
自分はのうのうとマドンナと楽しんでいたくせに!!
人の所為にしよう作戦で心の中の不満をぶつけていれば、
『別れたの、今日なの?』
「なんっ……え、……ぶっ…っっっ!!!」
意外な質問に、思わず顔を上げると、顔面にタオルを押し付けられた。
『あの男、最悪だな。なんでよりによって試合の日に…』
怖っ…!!!声から推測すると、レベル10くらいでマジギレだと思う…。
……そうですよ。
昨日、喧嘩になって、今朝、起きたらLIMEが来ていた。
試合に来て顔を合わせたら、もう女に見えないだの何だの言われて…。
朝からメンタルぼろぼろ…。
そんなのもう試合どころじゃなくなった。