弱みにつけこむとか最低ですね



「あの…、なんで知ってるんですか?」

『お前を見てたら分かるだろ』

「………え、」



意味は違っても、私を見てくれていた人がいたんだ…とか思って胸が熱くなるなんて相当参ってる。



「理由は浮気ですよ…。原因はさしずめ私が女に見えないから…」

『本気で言ってんの?』



真面目な顔をした彼の眼差しに捕まった。


何故かそれは非常に居心地が悪くって、敢えて逸らすしかなくなって―――。



「本気…ですけど…」

『見えてるよ』



グイッと腕が引っ張られて、私は彼の胸の中に収まった。

ウソだ……何これ?どこだこれ?



『俺には、女に…ちゃんと見えてるけど?』



耳元で囁かれた言葉が、心にすとんと落ちてきた。




なんかもう…あれだ。

いろんなものが溶けてきた…。



「何なんですか?急に…。いつも通り怒ればいいじゃないですか?」

『………』

「私が失敗するのなんて日常茶飯事じゃないですか?」

『……おう』

「それに容赦なく血も涙もない辛辣な言葉を浴びせるのが香坂キャプテンじゃないですか?」

『……おいこら』

「なのに…、なんで……なんだってそんな風に心配してくれるんですか?」

『お前、もう分かってんだろ?』



甘く響いた声が…、キャプテンの香りが…、私から正常な思考力を奪うから。



「分かんないですよ!今までそんなこと一度も……うわぁぁぁぁっっ!!!冷たっっっ!!!!!!!!」



首筋に当てられた何かに絶叫した。



『これ飲んだら元気になるから』

「いや、渡し方!!!」



私は叫んでいるのに、キャプテンは真顔。なんの悪ふざけだ?


だけど、似合わないと言われたくなくて、誰にも言ったことがないはずなのに。

大好物の苺ミルクを差し出してくる。



『お前はいっつも我慢しすぎなの。とりあえず、俺に話せば?全部聞くから――』



冷たいボトルとは真逆の熱い眼差しが私を射抜いた。


こんなの、相手が怖すぎる香坂キャプテンでもドキドキしちゃうじゃないですか?

スポーツ男子の色気云々とか意識しちゃうじゃないですか?



『あ、あとそのタオルもやるよ。特別に』

「え?いえ、洗って返しますよ。これ、借りといてなんなんですけど、使用済みですよね?」

『そうなの?今日、試合終わって10人くらいは貰いに来たけど…』



……なるほどね。モテ度合も凄まじい。






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