まだ、青く。
「わたし、すごく嬉しいです」


その日の帰り道。

途中まで一緒に帰ることになり、私は雨宮さんと同じ時間に校門を出た。

人生で初めて友達と並んで歩いてる。

雨宮さんは私よりも身長が低いから、並んで出来る影は凸凹。

それでも穏やかな雰囲気が私達の周りを覆っていて、なんだか安心する。

この雰囲気と距離感が私には最適だと思った。


「夏目さんが報道部に入ってくれて」

「私も嬉しいです。雨宮さんが報道部にいてくれて」


ふふっとお互いに笑い合う。

こんなにも波長が合う人がこの小さな町にいたんだ...。

奇跡って、起こるんだ。

初めて奇跡という言葉を信じられた。


「あの...差し出がましいのですが...」

「は、はい」


足音がピタリと止み、私も立ち止まった。

私が雨宮さんの方を向くと、街灯に照らされた雨宮さんの顔と潤んだ瞳が、私の目に鮮明に映った。


「鈴ちゃんとお呼びしても良いですか?」

「あっ、はい。もちろんです」


私の言葉に雨宮さんは星のように顔をキラキラ輝かせた。

その煌めきといったら、世界中のどんな宝石にも負けないくらいだった。


「わたしのことも名前で呼んで頂けないでしょうか?」

「あっ...はい」


名前で呼ぶ、のか。

なんだかテレる...。

今まで名字でしか呼んだことがなかったから。

でも、この胸一杯に溢れてくるこの感情はきっと...喜びなんだ。

それを言葉に詰め込んで放って

今私の隣に居てくれるこの小さくて大きな存在に

届けたい。

だから、

届ける。


「よろしくね......潤ちゃん」

「はいっ!」


興奮して声が裏返ってしまった潤ちゃんもやはり天使だった。

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