まだ、青く。
「えー、こっから話が変わりまして、部停期間前最後の仕事に取りかかろうと思います。それは...7月号のメイン、"水泳部主将インタビュー"です」

「お、夏っぽい」

「いいですね、水泳部。ちょうど7月末に県大会ありますし」

「それでなんだけど、今回のインタビュアーは......」


千先輩の声が途絶えた。

そして、全身で何かをキャッチする。


...ん?

何この感じ...。


自分に向けられているものって今まではあんまり感じなかったんだけど、今は感じてる。

これってもしや...

嫌な予感という感覚?

私は恐る恐る顔を上げた。


......あ。


千先輩はニカッとはにかんだ。


「鈴ちゃんに任せようと思います!」

「えっ?で、でも、私初めてで...」


千先輩はノンノンノンと人差し指を左右に振った。


「失敗を恐れていては何も始められない。今鈴ちゃんは新しい世界に踏み出したばかりで怖いのは分かるけど、だからこそやってほしいの。新しい世界に溶け込むための壁を乗り越えて大海原へ漕ぎ出してほしい」

「千先輩...」


千先輩は胸をドンと叩いた。


「今回の対談相手はアタシの幼なじみだから大丈夫。アタシから事前に新人さんがインタビューするから大目に見てって言っておくし、それにアイツは図体も大きいけど心も大きいヤツだから、ヘマしたって怒んないよ。昔から泳ぎが上手いのと穏やかなのだけが取り柄だからね~、滉平は」

「そ、そうですか...」


そう言われても不安は拭えない。

だって初めてのインタビューがメインの記事で、しかも先輩相手ってことでしょ?

ムリムリムリ、絶対ムリ。

でも、そんなことも言っていられないし...


頭の中でぐるぐると考え込んでいると、透き通った声が耳を通り抜けた。

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