狙われてますっ!
 


 朝、仕事が一段落ついた頃、汐音たちは給湯室で密かにお茶をしていた。

 輝美と汐音、それぞれが週末の花火での出来事を語る。

 汐音はキスのところだけ省いて話した。

 そこを省くと、ふたりで大きな花火を見ようとして、一発しか見られなかったマヌケな話になってしまうのだが……。

「マヌケね」
と一緒に食事をしたとき、この話をすでに聞いていたはずの輝美が、また、そう罵ってくる。

「いいんですよ~。
 すごい努力して一発しか見られなかったのが、加倉井さんもツボだったみたいで、ふたりでめちゃめちゃ笑えましたから」

 そう汐音が反論すると、
「それは大事なことよね」
と真琴が言い出した。

「笑いのツボが同じって大事なことよ。
 ……なによ、汐音」
と真琴がこちらを見る。

「いえいえ。
 ちょっと意外だったので」

 生真面目な真琴さんが、そんなところに重きを置いているとは、と思ったのだ。
< 365 / 438 >

この作品をシェア

pagetop