片桐兄妹の言うことにゃ
借金


そうだ、とふと燐は思い出した。
あの時、鮫貝と電話をしていた相手。

「お前、今日バイト?」

放課後、昇降口で燐を待っていたのは千治一人だった。
高陵の姿は無い。

きょろりと周りを見回す。

「高陵はバイト。お前は」
「今日は、ない」
「俺も夜まで暇。どっか行こうぜ」

どっか、とは。
その言葉に頷きも首を振るもしないまま、千治は先に行ってしまう。

「……はるちゃん」

背中を追いかけながら呼び止めた。正門ではない方へ進んでいたが、やがて駐輪場へ着く。

「ん」
「鮫ぽんが櫻第二にいるなら、あたしは必要ないと思う」

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