【短】好きになったのは、何かが欲しかったからじゃない
彼との思い出は短くも深い。
屋外での楽器練習の時に、何も言わずにいつも重い荷物を持ってくれたこと。
一緒に撮った文化祭での写真…2ショットを切り出すのに、滅茶苦茶時間が掛かったこと。
毎日毎日、1日2回は声を掛けようと、決心した私に向かって無口な彼が微笑んで受け入れてくれたこと…。

どんなに小さいことでも、全部全部立派な私の恋の思い出。

そして、とある日の下校の時に、偶々一緒に帰ることになって、隣で不意に触れた小指。
思わず思い切り自分の方に引いた私を咎めるように、がっしりと掴まれた、手。
驚いて見上げると、少しだけ赤くなった顔をしながら、前を歩いてる部活仲間へと、その掴んだ手のまま手を振った彼。

友達として好かれている、そんな想いはあった。
でも……彼には不動の存在がいる、それが…それだけが悔しくて苦しくて悲しかった。

こんなに私だって好きなのに、どうしてこんなにも私の想いは遠回りにしか届いてくれないのか。

涙を零す度に、深まる恋という感情。
ねぇ?
どこまでなら、私の存在は貴方の中、許されますか?

一人きりの教室で泣くことも増えたし、次第に自分から彼へと声を掛けるのが怖くなってしまっていた。

それでも、3年最後の、既に進路が決まっている皆の部活動は日毎盛り上がるもので、言葉さえ交わさなくても、彼とはアイコンタクトでなんとなく、気持ちを汲みとめられているような、気がしていた。

「告白しないと後悔するよ?」
そんな友達の助言は重々承知していたけれど…面と向かって振られたら、自分は如何なるのかとそう思うと怖くて、何も出来ずにいた…。
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