蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 結婚して初めて聞いた柚瑠木(ゆるぎ)さんの弱音、今までの柚瑠木さんだったら、絶対に私にこんな弱い所は見せようとしなかったのに。
 でも柚瑠木さんがここまで私の事を信頼して、自分の気持ちを話そうとしてくれているのが嬉しくて。

「それで、あの場所まで走って来たんですか?」

「……我慢するつもりだったんです、でもいざその時が来たら耐えられなかった。僕はもう、月菜(つきな)さんを手放すことが出来ないんだと気付いたんです。」

 いつの間にか私は、そんなに柚瑠木さんの心の奥に置いてもらえていたんですね。本当は私も不安だったんです、柚瑠木さんの本当の意味での特別に私ではなれないんじゃないかって。
 ずっと柚瑠木さんにとっての特別は【ますみさん】だけなのかもしれないと……

「着きましたよ、降りましょう。」

 いつの間にかタクシーの支払いを済ませた柚瑠木さんに手を引かれ、レジデンスのロビーを抜けてエレベーターの中へ。その間も彼の手は一度も私から離されることはありませんでした。
 部屋の中に入り明かりを付けると、柚瑠木さんはもう一度私をそっと抱きしめて……

「全て話しても、月菜さんは僕から離れない……その言葉を信じますから。」

 私がその言葉に静かに頷いた事を確認すると、柚瑠木さんは腕の力を抜き私を連れてソファーへと移動しました。


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