蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「信号が青だったことだけを確認して、僕はそのまま交差点を渡ろうとしたんです。まさかそんな時に限って飲酒運転のバイクがこっちに向かって走って来ているなんて思わなかったから。」
柚瑠木さんの言葉に私は寒気がしました。きっと真澄さんは、柚瑠木さんより先に向かってくるバイクに気付たのだと思います。
もし自分の大切な教え子に向かってバイクが走って来たとしたら、きっと……
「いきなり方向を変えて走り出した真澄さんを見て、僕はバイクの存在に気付いたんです。バイクを止めようと走っていく彼女に、僕は「駄目だ、行かないで真澄先生!」と叫びました。でも、彼女は僕の言葉に振り返りもしないでそのまま……」
柚瑠木さんがギュッと瞑り、重ねていた手に力が入ったのを感じました。きっと柚瑠木さんが繰り返し夢で見ているのは、この瞬間なのでしょう。
「誰かの呼んだ救急車が来るまで、僕はずっと真澄さんの傍で「やめて、お願い」そして「行かないで」と繰り返していたそうです。」
柚瑠木さんが魘されていた時に何度も言っていた言葉、貴方は何度のあの瞬間に戻って真澄さんを止めようとしていたのですね。
「真澄さんが救急車に乗せられて病院に行くのを、迎えに来た母とただ見ている事しか出来なかった。でもその事故の後、僕は真澄さんに会わせてもらえなくなったんです。父と母は彼女の事を何も教えてくれなくて……」