政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「大丈夫ですよ。旦那様がそばについててくれるじゃないですか。財前さんなら、お産を乗り越えて赤ちゃんに会えますよ」
優しい言葉をかけられるとじわりと目元が緩み、涙声で「はい」と返事をした。
「あ、いたたた……」
来た、と遠くから痛みが近づいてくる感覚がし、それは徐々にお腹をえぐるようなハッキリとしたものとなる。
「桃香……」
夏樹は背中を擦ってくれたが痛みは弱まることはなく、むしろ波が来るたびに強くなっていてに気が遠くなった。
助産師さんは波が引いて私の表情が戻ってから、またニコリと微笑んで、
「もっと痛みが強くなって、五分間隔になったらナースコールで呼んでくださいね」
と告げる。
「あ、あの、痛みはけっこう、強くなってきてるんですが……」
「まだまだこれからですよー。もっとのたうち回るくらい痛くなりますから」
彼女が出ていくと、途端に静かになった。私はこれ以上痛くなる宣言に凍りつき、ベッド脇に座る夏樹も「マジで?」とアイコンタクトを送っている。