綾取る僕ら
「別れないと思うよ」

心の声を見られたかのような悠人の言葉。

「うん、私もそうだと思うよ」

やっとバウンドしてボールを返す。

「何考えてんのか知らないけどさ、気をつけた方がいいよ」

悠人は背が高い。
バスケにすごく向いてる身体だ。
ボールを頭上で操られたら絶対に手は届かないし、ジャンプすればゴールなんてすごく近い。
私もこのくらい身長高ければ良かったなあ。

そんな恵まれた身体で、恵まれた顔面で、そんなド正論を言われたって正直困る。

「気をつけるも何もないよ」

悠人は今度頭上から両手で振りかざすようにしてボールを投げてきた。

「でもさ、みんなに気を遣わせてるよ」
「みんなって?」
「ゴンさんとか、龍平さんとか」

私の手に届いたそのボールは重くて硬くて痛い。
ズシンッと手のひらにジンジンと痛みが響く。

「なんで、何もないのに」

私は投げようとしたそのボールを下ろしてしまった。

「何もないって、そんなわけないと思うんだけど」

鼻で笑うように悠人が言う。

悠人には全てバレてる気がする。

6mくらいの距離を置いて目が合う。
全部知ってるんだよ、という目。

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