死にたがりな君と、恋をはじめる
ふぅと息を吐いて、準備を進めた。
荷物をまとめて一階に降り、玄関で靴を履く。
とんとんと足を打ち付けて、つま先を靴の先に差し込んだ。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、奈月ちゃん。気を付けて行ってらっしゃい!」
にこにことした笑顔で見送られて、笑顔を返した。
ドアをかちゃりと開けて、外に出ると、朝の涼やかな風が紺色のプリーツスカートを揺らし
た。
……はぁ。学校行くの面倒臭い……。
家の外に出たとたんにすぅっと表情を曇らせた私に、空中に浮かんでついてきていたレイは
くすりと笑い声を漏らした。
『あはは、すっごい顔。本当に行きたくなさそうだね~』
面白そうな顔をして笑うレイを、私はじとっと睨みつけた。
「そりゃそうだよ。レイにも昨日言ったでしょ?」
私は別に、学校に行くことだけが面倒臭いってわけじゃない。
イジメられるのが面倒臭いだけだ。
レイはうんうんと半笑いで頷いた。
『そらそうだよね。 わざわざいじめられに行きたい人なんていないよね』
「そうだよ」
私ははぁ~と大きなため息をついた。
「誠おばさんに悟られないようにするの、大変だよ……」
そう呟くと、レイはポンポンと私の頭を叩いた。
……まぁ、もっとも、レイは幽霊だからその手は頭に触れることなく通過したんだけど。
微かに風が通ったような感覚で、少し不思議だった。