死にたがりな君と、恋をはじめる
私はその呟きにはあえて触れず、ゆーま君の顔を覗き込んだ。
「ゆーま君、もうすぐだけど、疲れてない?」
「あ、う、うんっ。奈月お姉ちゃんは大丈夫?」
「私? 大丈夫だよ。ありがとう」
私の心配をしてくれるなんて……なんて優しい子なの。
私は少し胸の奥が温かくなるのを自覚して、それから頷く。
すると、ゆーま君はホッと安心したように息を吐いて、それから前を向いた。
……ゆーま君は平気そうにしてるけど、本当は心細いはず。
しっかりしているとはいえ、ゆーま君は幼稚園児だ。
早く家族に合わせてあげないと。
そう思って、私はよいしょっとゆーま君を抱き上げた。
ゆーま君は思ったより小さくて、軽くて、そして何よりも温かかった。
「っ……⁉ な、奈月お姉ちゃん? 僕疲れてないよっ?」
戸惑ったような視線をこちらに向けるゆーま君に、私はにこりと笑いかけた。
「いいからいいから。よしっ。急ぐよ!」
「うっ、え……」
私はゆーま君を抱っこしたまま、少し足を速めた。
ゆーま君はしばらく緊張したように身を固めていたけど、しばらくするとぎゅっと私に抱き着いてきた。