死にたがりな君と、恋をはじめる
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足を速めて、数分後。








私たちはようやく迷子センターに着いた。








するとそこには一人の女性がいて、私の腕に抱えられたゆーま君を見るなり驚いたように悲鳴にも近い声を上げた。











「友馬⁉ どこに行ってたの⁉」




「あっ……お母さん!」












その女性を見て、ゆーま君はぱっと目を輝かせる。






地面におろしてあげるとゆーま君は女性に駆け寄って、その足にギュッと抱き着いた。










女性はゆーま君を抱き上げると、その頬をそっと撫でた。









それから私に目を向けて、頭を下げる。








「すみません。友馬を保護してくださった方ですよね?」



「あ。はい。ゆーま君、じゃなくて……友馬君のお母さまですか。私はここまで連れてきただけですけれども……」









そう言って、頭を上げてもらおうとするとゆーま君のお母さまは申し訳なさそうに眉を下げた。









「本当に申し訳ありません。あぁっ。あの子にも見つかったことを連絡しなきゃ……。すみません、お礼をしたいので、ここでしばらくお待ちいただけますか?」




「えっ。いやいや、お礼なんて……そんなたいそうなことしてないですよ?」






「いえ、お礼をさせてください」











遠慮したけど、そう押し切られてしまって、結局椅子に座って数分待った。















しばらく待っていると、迷子センターに一人の女子が走り込んできて、膝に手をついた。








「友馬っ! 探したのよ⁉ どこに行ってたのよ⁉」







荒い息を繰り返して肩を大きく動かすその子に、私は声をかけた。






「あの……大丈夫ですか?」



「え、えぇ……はい。もう落ち着きました」










その子はフーっと大きく息を吐いて、上半身を起こした。







すると、パチッと目が合って、私は目を大きく見開いた。










「えっ……」



「は、……なんであんたがここに……」





そこに立っていたのは田中友花で、私は絶句してしまう。





田中と、こんなところで会うなんて……。






あたりの雰囲気が急激に下がって、私は田中友花を見つめた。
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